こんにちは、3Dアーティストの山﨑です。
今回は、『マジカルクラフト 猫と魔法のドレス』で担当したキャラクターについて、デザイン画(2D)から3Dモデルができるまでの流れ を、公開可能な範囲でやわらかくご紹介します。
「イラストがどう立体になるの?」と気になっている方にも、雰囲気だけでも楽しんでいただければ嬉しいです。
四面図はアート担当が制作
立体化の指針となる四面図(前・横・後ろ)は、今回はアート担当の 金谷さん が制作してくれています。

金谷さんの四面図は、髪の厚みや服のボリューム、形状の奥行きなどがとても分かりやすく、3D化を意識した情報が丁寧に整理されています。そのため、モデリングに入る際の迷いが少なく、土台を安定した状態で組み立てることができます。
今回担当したキャラクターでも、金谷さんの立体把握能力の高さが随所に感じられ、イラストの雰囲気を立体に落とし込む作業がとてもスムーズでした。
制作ポリシー:2Dの魅力をできるだけ忠実に3Dへ再現
わたしの制作ポリシーは、アートの方が描いてくださった2Dイラストを、できるだけ忠実に3Dへ再現すること です。
2Dには、線の強弱、角度、色の重ね方、ボリュームの取り方など、デザイナーさんが意図したキャラクター性がたくさん詰まっています。
それを3Dに置き換えるときに、できるだけその魅力を損なわずに表現することを常に心がけています。
イラスト再現のためのシェーダー開発
2Dイラストの魅力を3Dでも損なわず表現するために、今回は シェーダー面での工夫 にも力を入れています。
まず、優秀なエンジニアの方と協働しながら シェーダー開発 に携わり、水彩画のような柔らかいタッチを表現できる質感を取り入れました。
さらに、頂点カラーで線画の「入り抜き」 をコントロールし、手描きの線のような繊細さを再現しています。
これにより、立体でありながらもイラストらしいやわらかさを保つことができます。
加えて、リムライトやハイライトの調整 を工夫することで、2Dの雰囲気を崩さずにキャラクターを自然な立体として見せる表現にも成功しています。
こうした細かな調整の積み重ねが、コンセプトアートが持つ空気感をそのまま3Dに落とし込むことにつながっています。
三面図をMayaに読み込み、立体を組み上げ
制作は、三面図(正面・サイド・後ろ)を Maya に読み込むところから始まります。
顔だけのモデルであっても全身の情報を取り込み、どの角度から見ても印象が変わらないバランス を大切にしています。
特に 斜めから見たときの表情 は崩れやすいため、口元の奥行きや位置を丁寧に調整し、自然でかわいらしく見えるよう意識しています。
テクスチャ制作:色と質感に命を吹き込む工程
色や質感を作るテクスチャ制作には、Mudbox・Substance Painter・Photoshop を使い分けています。
正面・横・後ろ、どこから見てもコンセプトアートと同じ印象になるように、陰影や色味を少しずつ重ねながら仕上げていきます。
最終チェックと仕上げ
モデルとテクスチャが揃ったら、最終確認を行い微調整します。光の当たり方や色のまとまりなど、立体として自然に見えるように整え、完成度を高めていきます。
表情づくり
表情アニメーションはアニメーターが担当しますが、その基礎となる部分は3D側で制作しています。
- 口元の動き:フェイシャルリグ
- 目・眉など:Mayaのブレンドシェイプ
これらを組み合わせることで、キャラクターが豊かで生き生きした表情を見せられるようになります。
おわりに
デザイン画・四面図・シェーダー開発・モデリング・テクスチャ・リギング・スキニング・表情付け…。ひとつのキャラクターが完成するまでには、多くの工程と、多くの人の技術が集まっています。
この記事でご紹介したのはその一部ではありますが、「こうやって立体になっていくんだ」と楽しんでいただけたら嬉しいです。
最後に、おまけとして ネム&アリッサ兄妹 の3Dモデルも少しご紹介します!
お読みいただき、ありがとうございました。












